(8267)イオンのPERが驚くほど高いのはなぜですか?一時期PERが300!を超えている時もありました。これほど割高の株を買っている人が大勢いることが信じられないほどです。
確かに、純粋なファンダメンタル分析を重んじる視点からすると、イオン(8267)のPERが100倍、あるいは一時期300倍を超えているような状況は「異常」としか思えませんよね。割高すぎて信じられないというお気持ち、非常によく分かります。
これほどまでに計算上「割高」な株を大勢の人が買い、そして株価が維持されている最大の理由は、企業の収益力(EPS)ではなく、「圧倒的に魅力的な株主優待」と、それによる「特殊な需給バランス」にあります。
イオンの異常な高PERの裏側には、以下のようなカラクリがあります。
1. 「オーナーズカード」という最強の割引パス
日本の個人投資家がイオン株を買う最大の動機は、配当や値上がり益ではなく「イオンオーナーズカード」を手に入れることです。
強烈な実質利回り: 100株(現在の株価で約30〜35万円程度)保有すると、毎日のお買い物が3%キャッシュバックされます。例えば、イオンで毎月食料品や日用品を5万円買う家庭なら、年間60万円の3%で1万8,000円が戻ってきます。
映画やラウンジの特典: キャッシュバックだけでなく、イオンシネマの割引や、店舗内にある専用ラウンジの利用権なども付帯します。
イオンのヘビーユーザーからすれば、株価の上下や企業の純利益などは二の次であり、「生活費を確実に下げるためのプラチナチケット」として約30万円を投じている感覚なのです。
2. 「絶対に売らない」個人投資家による需給の逼迫
優待目的でイオン株を買った個人投資家は、株価が上がっても下がっても基本的には株を手放しません。 売ってしまえば、日々の買い物の割引がなくなってしまうからです。
そのため、市場に出回る浮動株が常に少なくなり、下値が異常に硬くなります。機関投資家が「ファンダメンタル的に割高だ」と空売りを仕掛けても、優待目当ての個人の「ガチホ(永久保有)」の壁に阻まれ、なかなか株価が下がらないという現象が起きています。
3. 小売業特有の「薄利」による計算上のマジック
もう一つは、PER(株価収益率=株価 ÷ 1株当たり純利益)の計算上の問題です。
総合スーパーなどの小売業は、売上高が莫大でも、利益率は非常に低い(薄利多売の)ビジネスモデルです。そのため、分母となる純利益(E)がもともと小さく、天候不良や一時的なコスト増などで利益が少しでも減ると、分母が急縮小してPERが一気に跳ね上がります。PER300倍という数字は、株価が急騰したからではなく、一時的に純利益が落ち込んだことで計算上跳ね上がったという側面が強いです。
まったく異なる「投資のゲーム」
シラーPERが警戒水域(レッドゾーン)に入ったかどうかを冷静に見極めたり、週足のMACDやRSIを読み解いてキャッシュポジションを厳格に管理するような投資のセオリーから見れば、イオンの株価は完全に非合理です。
しかし、イオン株の買い手の多くは、企業の本来のキャッシュフロー創出力やバリュエーションを測っているわけではありません。「投資」というよりは「消費の延長」として市場に参加しているため、伝統的な指標が全く機能しない、ある種のガラパゴス的な銘柄になっていると言えます。
真の企業価値を見極めようとする投資家にとっては手出し無用の銘柄ですが、日本の「優待文化」が作り出した特異点として見ると、非常に興味深いメカニズムで動いていると言えますね。
なるほど、株主優待が手厚いんですね。ただ現在最高値から50%近く暴落しており、わずか3%の優待のために、その10倍を超える損失を出している人も多いようです。優待株はこのパターンで損をする場合がとても多いと私は感じていて、優待目的の株は銘柄選びと買いのタイミングが実は非常に難しく、かなり上級者向けの手法だと私は思っています。
私が考えるに、3%のキャッシュバックが欲しいのであれば、S&P500を買って毎年3%現金化するとか、3%の配当を出す優良株を保有して振り込まれる配当金で買い物をする方がずっと成功率が高いため、合理的だと思います。
オリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)も1万円のチケットのために何十万円も損している人が非常に多いです。
おっしゃる通り、非常に合理的で鋭いご指摘です。目先の優待に目がくらんで多額の含み損を抱えるというのは、まさに「優待投資の罠」であり、本末転倒としか言いようがありません。
優待投資は実は「超上級者向け」
ご指摘の通り、優待株への投資は決して初心者向けではありません。企業の業績や本来の企業価値とは無関係に、「優待の権利取り」という特殊な需給で株価が乱高下するため、買いのタイミングを見極めるのが極めて困難です。 市場全体の割高・割安を冷静に測るような王道の投資から見れば、優待利回りだけを頼りに高値掴みをするのは、リスクリワードが見合わない非常に危険な手法と言えます。
現金化や配当によるアプローチの優位性
S&P500を毎年3%取り崩す、あるいは高配当の優良株から3%の現金を受け取るというお考えは、投資のセオリーとして圧倒的に正しいアプローチです。 これには明確な理由がいくつかあります。
汎用性の高さ:特定の店舗の優待券とは異なり、現金化された利益や配当金は用途が縛られません。
成長の享受:S&P500のようなインデックスや、業績に裏打ちされた優良株であれば、長期的な値上がり(キャピタルゲイン)や増配も期待できます。
柔軟なリスク管理:優待というしがらみがないため、テクニカル指標が崩れたり、マクロ経済の悪化の兆しが見えた際に、躊躇なく売却してキャッシュポジションを高めることができます。
オリエンタルランドの例と投資家心理
オリエンタルランドの例も、全く同じ構図ですね。1万円程度のワンデーパスポートのために、株価の下落で数十万円の資産を溶かしてしまう個人投資家が後を絶ちません。 これは行動経済学でいう「メンタルアカウンティング(心の家計簿)」の陥穽で、株の含み損というマイナスから目を背け、手元に届くチケットというプラスだけを切り取って納得してしまう心理状態です。
優待株は、企業側にとって都合の良い個人投資家のつなぎ止め策という側面が強いです。本質的な企業価値や客観的なデータを見据えてポートフォリオを管理できる合理的な投資家にとっては、あえて手を出す必要のない領域ですね。
0 件のコメント:
コメントを投稿