投資の神であるウォーレン・バフェットが退任し、バークシャー・ハサウェイの新トップに就任したグレッグ・アベル氏は、市場で今バブル的に過熱しているAlphabetへの投資を更に204%増やし3.6兆円規模へ拡大したそうです。これは明らかにウォーレン・バフェットの投資手法とは異なるものであり、バークシャーはバフェット時代とは全く異なる企業に変化してしまったように私には感じられます。
私は今までバフェット(バークシャー)の動向を必ずチェックして参考にしていましたが、これからは少し控える必要があるかもしれないと感じています。
バークシャー・ハサウェイの体制変更と、直近の13F(保有資産報告書)に見られる劇的なポートフォリオの変化を見ていると、「バフェット氏の時代は終わったのか」と感じられるのも非常に無理のないことです。
特に、トッド・コムズ氏が運用していたとされる銘柄(VisaやMastercardなど)をバッサリと売却し、市場で過熱感が意識されやすいAlphabet(Googleの親会社)の株式を204%(約3倍)も買い増して総額230億ドル(約3.6兆円)規模にまで拡大した動きは、一見すると従来のバフェット流「バリュー投資」の枠組みから大きく逸脱しているように映ります。
しかし、この表面的な数字の裏側にある「バークシャーの変わらない本質」と「バフェット氏自身の過去の言動」を少し掘り下げてみると、また違った景色が見えてきます。
少し冷静に、以下の3つの視点からこの動きを分解してみましょう。
1. Alphabet投資は「バフェット氏自身の後悔」の清算である可能性
新CEOのグレッグ・アベル氏が独断で動いたように見えますが、実はAlphabetへの投資は、バフェット氏が健在だった2025年後半(第3四半期)から始まっていたものです。
バフェット氏と故チャーリー・マンガー氏は、過去の株主総会で何度も「Google(Alphabet)への初期投資機会を逃したのは最大の失策(恥ずべきこと)だった」と公言していました。彼らはGoogleの「検索広告」というビジネスが、どれほど強固な経済的な溝(モート)と価格決定権を持っているかを熟知していながら、ITへの苦手意識から手を出さずにいました。
かつてIBMへの投資で失敗したバフェット氏が、その後に「iPhoneは強力な生活必需品である」と見抜いてAppleへ巨額の投資を行い、バークシャー最大の成功を収めたように、今回のAlphabetの買い増しも「テクノロジー企業」としてではなく、「圧倒的なキャッシュ創出力を持ち、クラウドやAIインフラという新たな独占的インフラを握った超優良バリュー株」として、バークシャーのDNAに則って評価された結果と言えます。
2. ポートフォリオ全体における「3.6兆円」のリアルな比率
3.6兆円という数字は単体で見ると天文学的ですが、バークシャーのポートフォリオ全体におけるAlphabetのウェイトは約7.6%(第5位の保有銘柄)です。
現在のトップ4である以下の銘柄の強固な布陣を崩したわけではありません。
Apple(AAPL)
American Express(AXP)
Coca-Cola(KO)
Bank of America(BAC)
アベル氏率いる新体制が実行したのは、前任の投資マネージャー(トッド・コムズ氏)の退任に伴う「5%ほどの小口のポートフォリオ(Visa、Mastercard、Amazonなど)のクリーンアップ」であり、そこから得た資金や積み上がった莫大なキャッシュ(約3,800億ドル)の一部を、より確実性の高い、かつてバフェット氏が「買い逃した」と悔やんだコア銘柄へ集中させた、というのが実態に近いと考えられます。
3. 「アベル流」への移行と投資家としての距離感
とはいえ、アベルCEOへの権限移譲が進んだことで、ポートフォリオの「見た目のハイテク化」や入れ替えのスピード感が、これまでのバフェット時代よりもアグレッシブに感じられるのは事実です。
もしこれまで「古き良き、伝統的なバリュー投資の教科書」としてバークシャーを100%信頼していたのであれば、今後は彼らの動向をそのまま鵜呑みにするのではなく、「現金の保有比率」や「株主還元(自社株買い)への姿勢」といった大枠の資本配分(キャピタル・アロケーション)の規律が維持されているかどうかをチェックするに留め、個別銘柄の売買からは少し距離を置いて観察するというのは、極めて合理的で賢明な判断だと思います。
変わるものと、変わらないもの バークシャーは「地味な伝統企業を安く買う会社」から「圧倒的なキャッシュフローを誇る独占的リーダーを適正価格で買う会社」へと、Apple投資の時点で既に変貌を遂げていました。今回のアクションも、その延長線上にある「バフェット流の進化系」なのか、それとも市場の波に飲まれたものなのか――その答えは、彼らが誇る「巨額の現金余力(キャッシュポジション)」を今後どうコントロールしていくかに現れるはずです。
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