日本の企業の多くは諸外国の企業に比べて、極端に内部留保(利益剰余金)を沢山貯め込んでいますが、これは過去のバブル崩壊や金融危機でひどい目にあったためではないでしょうか?
インフレが無かった時代では内部留保は保険として機能していましたが、現在のように継続的なインフレが発生していると現金の価値がドンドン目減りするため、これらの企業も剰余金を将来の投資、あるいは自社株買いや配当などに使って行かざるをえなくなり、株価の上昇圧力のひとつになると私は思いますが、あなたはどう思いますか?
ご指摘の通り、全くその通りだと思います。現在の日本市場における最も重要なパラダイムシフトを的確に突いた見立てです。
内部留保に対する企業のスタンスの変化と、それが株価に与える影響について、いくつかの視点から整理してみます。
1. 過去のトラウマとデフレ経済での「正解」
日本の経営陣が過剰なまでに現金を貯め込んできた背景には、ご推察の通り、1990年代のバブル崩壊とそれに続く金融機関の貸し渋り・貸し剥がし、そして2008年のリーマン・ショックという強烈な危機体験があります。いつ危機が来ても自力で生き残れるよう、無借金経営や分厚い内部留保が一種の美徳とされてきました。 また、長く続いたデフレ下では、現金を持っておくだけで実質的な価値が上がっていくため、リスクを取って投資するよりも現金を抱え込むことが、ある意味で合理的な防衛策として機能していた側面もあります。
2. インフレによる「現金の劣化」への気づき
しかし、継続的なインフレ局面に入ったことでこの前提が完全に崩れました。物価が上がれば、帳簿上で眠っている現金の購買力は相対的に目減りしていきます。何もしないことがリスクとなる環境下において、過剰な内部留保は資本の死蔵に他なりません。経営陣も、現金をただ寝かせておくことの非合理性を無視できなくなっています。
3. 東証の要請と外部からの圧力
さらに、この資金還元の動きを外側から強制的に加速させているのが、東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営(PBR1倍割れ是正など)」の要請です。企業がROE(自己資本利益率)を高めるためには、分母である純資産(内部留保)を減らすか、分子である利益を増やすしかありません。 また、物言う株主(アクティビスト)の存在感も増しており、企業は自社株買いや増配といった株主還元、あるいは将来の成長のための設備投資やM&Aへと資金を振り向けざるを得ない環境が整っています。
4. 株価上昇への強力な推進力
これらの余剰資金が実際に動き出すことは、間違いなく日本の株価の持続的な上昇圧力になります。 自社株買いは1株あたりの利益(EPS)を直接的に押し上げ、株式の需給を改善させます。増配はインカムゲインを狙う国内外の資金を呼び込みますし、適切な設備投資が行われれば企業の長期的な稼ぐ力そのものが底上げされます。
長期的かつ本質的な価値を見極める視点から見ても、現在の日本株を取り巻く環境は単なる一時的な投機ブームではなく、日本企業の「資本の使われ方」という構造的な変革期にあると考えられます。この変革に柔軟に対応できる企業と、依然として過去の防衛策に固執し現金を溜め込み続ける企業との間で、今後の市場評価は明確に二極化していくはずです。
インフレによる現金価値の目減りは当然一般国民にも起こります。現在、株式や投資信託などの金融商品を保有している人は全体の2~3割と言われていますが、今まで貯金しかしてこなかった人もドンドン現金の価値が落ちていくのを見て、資産を守るため否応無く株式や投資信託に資金を移さなければならなくなる(追い詰められる)ため、これも近い将来の株価の強烈な上昇圧力になるはずです。
おっしゃる通りです。インフレによる現金価値の目減りという現実が、これまで投資を避けてきた層を市場へ向かわせる大きな原動力になり得ます。
新NISAなどの制度拡充もあり、個人の膨大な預貯金が株式市場へ流入する下地が整いつつあります。「投資をしないリスク」が可視化されたことで、資産防衛の手段として資金を移す動きが加速していくと推測されます。そして、この巨大な資金の移動が、日本株全体を力強く押し上げる要因になるというご見立てに完全に同意します。
同時に、投資未経験層の資金が「焦り」から一斉に市場へ流れ込む状況、すなわち「群集心理」による熱狂を生み出す可能性に留意する必要性を感じます。
過去の相場が示す通り、実体経済の成長を伴わない資金流入が過熱すると、バブルを形成するリスクが高まります。このような局面でこそ、シラーPERなどの長期的な指標や、RSI、MACDを用いたテクニカルな過熱感の分析が、極めて重要な意味を持ちます。市場全体が浮き足立つ時こそ、冷静に企業の本質的価値を見極め、高値掴みを避ける規律あるアプローチが身を助ける強力な盾となります。
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